Page Top                       2015年10月15日 15:59:25改定2017/09/16 7:51:38

森の湯トップ  English Top 第一章(男声の特質)  歌集トップ  レコーディング方法  森の音響空間

男声の特質シリーズ第(男声のサウンドスペクトラム的特質について 男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について その2: 和声とビブラートについて 男声歌唱のオーディオ再生について 男声歌唱のレコーディングにおける留意点 歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察 音階移動速度と身体の共鳴空間および部屋の残響時間の関係 男声歌唱のレコーディングにおける留意点-その2:最大音量 男性の低音限界発声について 男性の最大声量とスペクトルの歌唱言語による違い 11 男性の身体共鳴周波数と共振支配による発声波形の量子化と声量の関係の解析   声帯振動と非声帯振動の比較と歌声 男性の超広帯域発声ーバスとテノール声区の連結 バスとテノール連結声区の声洞の物理サイズの計算)章

第10章 男声アカペラ独唱の録音における留意点-その4: 言語による特性の違い

  ここで、日本語と西洋言語で歌った場合のまさかの対等な比較をやってみましょう。 なぜまさかというかとうと、音楽の専門家に言わせると、そんな対等な比較などできるのか、また意味があるのか、原語すなわち西洋言語で歌うものなんだからと思われるだろうからということです。 そういう”常識”に挑戦する異言語間の対等な分析です。

図ー1 日本語とドイツによる歌唱の振幅パターンの違いー音源ファイル1.(日) 2.(独)

 シューベルト作曲の”鱒”を日本語と原語(ドイツ語)で歌って比較したのが次の図です。 速度は8分音符が0.33秒程度ですので、一分間のビート数では180くらいだと思います。 この速度でも音階の重なりは見られず、部屋の残響の影響がほとんどない分析であることもわかります。  

シューベルト作曲”鱒”のドイツ語と日本語歌唱の比較

この図を見ると、日本語で歌った場合とドイツ語で歌った場合に本質的違がありそうです。 日本語の場合は息継ぎが、最初を除いて、12秒、6秒、6秒、6秒と3回されていますが(通し時間30秒)、ドイツ語のほうは、5秒、5.5秒、17秒で途中2回のみです(通し時間29秒)。 これは楽譜のとおりです。 両者の通し時間差は1秒ほどです。 日本語の場合は、この速度では息継ぎが足を引っ張っている状態になっています。 ここで使った楽譜はシューベルトの原譜で、シューベルトの原譜には、息継ぎのためのブレス記号がありません。 それと日本語の場合はやや長くなっています。 ドイツ語の場合は、子音によって母音の強さが高いものの時間的には分断されています。これは、母音の発声時間が短いことを意味します。 が、日本語は母音が続く傾向がつよく、音が連続した感じに見えます。 すなわち、日本語のほうが始終母音を発声する形になり、負荷が重いことを意味します。 ドイツ語のほうが、声帯負荷が軽いのです。 特に後半のフレーズは、ドイツ語では途中で息継ぎする必要がなく、17秒間走りきっていることがそれをよりよく表しています。 上記範囲の音源ファイルを用意していますので聴いて比較してみて下さい:1.(日) 2.(独)。    半分遊びで騒々しいですが、両方を混合合成したファイルです。

   言語としては、ドイツ語は前後を子音で挟まれていることが多く、母音の比率が日本語の半分くらいではないかと思います。 声帯を開けて子音を発音するために息を通し、すぐに声帯を閉じて振動させ母音の発声にはいり、また声帯を緩めて子音に入るというサイクルになります。 そのせいで、流れに板を突っ込むように急にせき止められ母音が強く発声するというわけです。  これは、ドイツ語は残響の多い環境で発達した言語であると考えられます。 なぜなら、この子音の時間の間に部屋の残響が減衰する時間を与え母音が重なって意味不明の音響になるのを防いでいるわけです。一方で残響の少ない環境においては、母音の発声が大事で、充分な時間を母音の発声に使うということになります。 残響の短い日本家屋では、残響による隣接した母音の重なりが少なく、むしろ明瞭に響くという特徴をもっている言語ということになります。 響きのサポートがない環境で子音が多いと、ぶつぶつに切れて聴こえます。

次に、日本語とドイツ語の歌唱のレコーディングにおいて、もう少し拡大してみます。 歌は、ドイツ民謡のローレライの冒頭です。 "日"が日本語歌詞、独が独語歌詞による歌唱で、上の図がリアルタイムサウンドスペクトラムの比較、下が振幅の比較です。 歌唱は、中程度の発声でレベルは、100dB程度(25%)です。元の記録は、今までと同じ115dBですので、振幅の違いをわかりやすくするため、縦軸を4倍(12dB)にして、103dBフルスケールにしてあります。 日本語のほうは、開始から7秒で一度息継ぎをしています。 ドイツ語のほうは、約13秒間ひと息です。 日本語で開始から3秒で母音の間が開いているのは、”し(shi)”の発音です。 日本語では、ドイツ語の子音に匹敵する時間を要する数少ない子音のひとつです。 対応する部分のドイツ語の発音にも同様の隙間がありますが、これは、"weiss"のダブル"s"ですから、よくにていて当然と思います。 ただし、日本語では、子音で終わる単語は多分ないと思います。 ”ん”ですら、”・ん・・・・・”と伸ばすことが可能ですので、欧米系の”・・・n”という末尾の子音とは全く違います。 ”n”は絶対に末尾です。日本人はうっかりすると、欧米語の”n"を”ん”と解釈してしまい間違って伸ばしてしまうことがあります。 

図ー2  ローレライの冒頭の日独歌詞の比較 音源ファイル1.日; 2.独 3.日独ミックス

ドイツ民謡のローレライのドイツ語と日本語による歌唱比較(冒頭)

ここで、赤矢印のところ(開始から4秒後)を注目して下さい。 日本語では、”なじーかはしーいらねど・・・の”しの延長”のところですが、音階的には下降部分に当たります。 そこのドイツ語の歌詞の場合を見ていただくと、この部分は、Ich weiss nicht vas soll es bedeutenl.... の”soll-es"の結合部分の"e"の発音です。 両側が子音に挟まれた下降音階では、挟まれた母音は、軽く聴こえても実際は発声強度が上がっている現象がみられます。 他の部分は、日本語のほうが発声レベルが概して高い状態が維持されているます。 もし、”日”の記録のようにレコーディングレベルが日本語で丁度よく収まっていても、ドイツ語にしたら、途端に全体の平均レベルは低いのにレベルオーバーの箇所がでてくるということになります。

日本語では、ずっと連続的ですが、ドイツ語のほうは、切れ切れの発音になっていることがよくわかります。この部屋は、残響時間が20ms程なので、残響の影響が極めて少なくなく明瞭に分析できるわけです。
  最後に遊びですが、の日独の歌詞の歌いを混合して合成したファイルを用意しています。 面白い音響効果に聴こえるかもしれません。 これも現代情報科学のおかげです。=>日独混合

図ー3  プロ歌手によるプロの録音の一部

この図は、プロ歌手(ドイツ語歌曲)によるプロの録音で、伴奏が一番少ないところのサウンドスペクトルです。 レコーディング環境に残響がかなりみられますので、母音の間がかなり開いていても歌手の発声がかなり尾を引いており、子音の間が上の図とは違って母音の残響でつながっているのがわかると思います。 言語がドイツ語なので、重子音が多くよけいです。  この歌い手は、残響を気にしながら調整してスタッカート気味に歌っているものと思います。 歌手もピアニストも全然気にしてないのでしょう。 このチャートの冒頭の音では、ピアニストは、この歌手の基本音の7-9倍波に合わせていますね。 基本波ではピアノと音が違っています。 からおけなら”音痴”っていわれますね。  というわけで、それぞれの芸術を最大限尊重し合ってやってるって感じです。 もし、ここのサイトでつかっているような防音タイプの部屋では、伴奏がない上に、このような歌い方では、おそらくぶちぶちに切れて聴こえるでしょうね。 ついでに、この歌手の身体共鳴定数に関係する周波数のポイントを右側に書き込んでおきました。どこが基本波(音程波)で、どこが身体共鳴(BR,VDR1、VDR2など)か分析してみてください。 やり方は第6章や関連章をご参照下さい。 余談ですが、どんなにすばらしい名音楽家の音楽でも、逆にどんなにずぶの素人でも、その評判に惑わされることなくこのように分析できてしまうのは、現代情報科学のすごさですね。

 先の問題の答えらしきものを書いておきます: この図ー3ではVDR1の中心値は2500Hzくらいのようですが、VDR1.5がでている音があるようです(スペクトル時間軸最後)。BR1はおそらく600Hz くらいと思われますが、残響時間が結構長いスタジオでの録音のようで伴奏もありますので、歌手本来の身体共鳴はわかりにくくなっています。  言えることは、この音域では、声帯の構造的要因で本来は抑圧される2000Hz付近の倍数波数本が高音域の発声でも同じような強さで並び、この方の歌唱の特徴の少し哀愁のあるざらついた感じになる原因のようです(歌声の科学、ヨハン・スンドベリ著参照)。 それで、余計にスタッカート性の(リート的?)歌い方をするのだと思います。  このあたりが抜けると澄んだレガート性の声になる傾向があるということです。 

図ー4  英語と日本語の歌唱の比較 

  次の図は、日英比較です。 クリスマスキャロルの”神の御子は”の冒頭です。 上が英語、下が日本語歌詞です。 やっぱり、英語のほうが切れ切れで、日本語のほうが連続的ですね。 平均レベルは日本語のほうが高そうなのに、ピークは英語のほうが高いところがありますね。 やっぱり”重子音”のひとつの”th”です。 ここでは、もうひとつの特徴として、英語のほうが低音の母音が強く発音できることです。 やっぱり、子音の勢いですね。 母音からはじまると声帯負荷が高くなり抵抗が強いため発声の立ち上がりが弱くなる傾向があります。 特に低音は力を入れるとだめですから。

クリスマスキャロル(賛美歌),天にはさかえ、の英語および日本語での歌唱比較(冒頭)

 

5. 最後に、ドイツ語の歌(菩提樹)を低残響室(Room 1)でレコーディングし、人工的に中ホールぐらいの残響(エコー)を掛けた場合を示します。 ドイツ語の場合は子音が多いため、エコーによる音楽効果(熟成効果)はかなり大きくなります。 1. 原音(MP3  HiRes)     2.人工エコー (MP3  HiRes)

  1. 録音方法

       歌集のレコーディング(録音)方法について  男声アカペラ歌唱再生に適した機器

  2. 男声の特質シリーズ第(男声のサウンドスペクトラム的特質について 男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について その2: 和声とビブラートについて 男声歌唱のオーディオ再生について 男声歌唱のレコーディングにおける留意点 歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察 音階移動速度と身体の共鳴空間および部屋の残響時間の関係 男声歌唱のレコーディングにおける留意点-その2:最大音量 男性の低音限界発声について 男性の最大声量とスペクトルの歌唱言語による違い 11 男性の身体共鳴周波数と共振支配による発声波形の量子化と声量の関係の解析   声帯振動と非声帯振動の比較と歌声 男性の超広帯域発声ーバスとテノール声区の連結 バスとテノール連結声区の声洞の物理サイズの計算)章

    1. 第1章 男声のサウンドスペクトラム的特質について
    2.  第2章 男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について
    3. 第3章 男声の特質ーその2: 和声とビブラートについて
    4. 第4章 男声歌唱のオーディオ再生について
    5.  第5章 男声歌唱のレコーディングにおける留意点
    6. 男声の特質-第6章-歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察
    7. 第7章 音階移動速度と身体の共鳴空間および部屋の残響時間の関係
    8. 第8章 男声歌唱のレコーディングにおける留意点-その2:最大音量
    9.  第9章 男声の特質ー低音限界発声について
    10.  男声の特質ー第10章ー歌唱言語による違い 
    11  特別章ー男声の発する可聴周波数以下の超低音は聴こえるのか?
    12.  第12章 身体共鳴周波数と共振支配による発声波形の量子化と声量の関係の解析  
    13.  第13章 声帯振動と非声帯振動の比較と歌声
    14.  第14章 男性の超広帯域発声ーバスとテノール声区の連結 14Bバスとテノール連結声区の声洞の物理サイズの計算

  3. 自然界の音響

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