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男声の特質シリーズ第(男声のサウンドスペクトラム的特質について 男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について その2: 和声とビブラートについて 男声歌唱のオーディオ再生について 男声歌唱のレコーディングにおける留意点 歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察 音階移動速度と身体の共鳴空間および部屋の残響時間の関係 男声歌唱のレコーディングにおける留意点-その2:最大音量 男性の低音限界発声について 男性の最大声量とスペクトルの歌唱言語による違い 11 男性の身体共鳴周波数と共振支配による発声波形の量子化と声量の関係の解析   声帯振動と非声帯振動の比較と歌声 男性の超広帯域発声ーバスとテノール声区の連結 バスとテノール連結声区の声洞の物理サイズの計算)章

声道と声洞はどう違うのか? ー音響生理学実験的アプローチ

 声道とは、解剖学的な意味で声の通る道ということで要するに声帯から口頭までの管状の空間のことを言います。 管といってもまっすぐな一定の直径を持っているわけではなく、複雑な形をしている上に、その形が変化します。 男性の歌声には、その声道共鳴が強く現れるということは良く知られたことで、その共鳴を歌手のフォルマントともいいます。 ところで、問題は、その共鳴の発生場所です。

 図-1 朝一番の発声における身体共鳴の現れ方

朝一番の鈍い声とその共鳴変化ー声洞の形成ー声道共鳴との分離この実験は、朝一番の発声について、まず調べてみました。以前から気がついてはいたのですが、朝一番の声は音域がもっとも広いにも関わらず、なにかいつもの歌声ではない。通常は梨状溝に抑圧されるはずの2000Hzあたりに共鳴が強くでる傾向があり、また声道共鳴自体が低いことも特徴で、いわゆる起きぬけの響きの低い鈍い声になるわけです。 ところが、時間がたつと、元気のいい響きの高い声になります。 すなわち、男性歌手フォルマントがちゃんとでるようになるわけです。 考えてみると不思議です。 これが、本当に声道共鳴だろうかということです。同一人物において、朝の起き抜けから喉の構造が大きく変わるはずもなく、またさらに、喉の構造は男女は基本的には同じはずなのに、なぜ女性には顕著でないのでしょうか。 その疑問を解く鍵が1日1回朝一番しかできないこの実験にありそうです。

 まず最初の声(起きた直後の第一声)、ここではB1ですが、を出したときに、手で口頭の開口を15cmほど延長してみます。 すると、見事に共鳴周波数が下がります。該当部分の共鳴波が3175Hz/2844Hzから1480Hzまで、およそ半分の周波数になっていますから、声道の基本共振長が倍になったことになります。 よく観察すると、およそ3系列あるようです。 これらのうち2つは、声道の長さにほぼ比例して大きく下がるので、声道の開菅共鳴といえるでしょう。 15cm延長ということで計算すると数値はだいたい合うようです。 一方で、変化しない成分もあることがわかります。ところが、そのあと声洞/声道共鳴の強いB4とC4で若干の発声をしたあと、再度同じ音階(B2)で同じことをしてみると、今度は、前にようには下がりません。 よくみると、下がる成分と下がらない成分があり、ほとんど下がらない成分が主要な部分を占めていることがわかります。 これは、声道の延長にほとんど影響されない場所による共鳴が発生するようななんらかの音響生理学的な身体構造変化が起こったと解釈できます。 軟口蓋が閉じて鼻腔方向への伝播は遮断されているので、場所としては、喉の奥の声帯の上部空間しかないでしょう。 これが、声洞を形成し共鳴体となるというわけです。 朝の起き抜けでは、喉が収縮していて、起きてしばらくすると拡張して男性特有の共鳴空間を形成するようになるとすれば説明できます。
  男性では、もうひとつの要因が考えられます。 それは、声帯のサイズと質量が大きいのではないかということです。 そのために分割振動を起こしやすく、パルス的な高調波成分が多くなり、その空間を3000Hzくらいの周波数で共鳴駆動するのに充分なエネルギーを供給できるというわけです。 女性や男性でも裏声の場合は、声帯振動そのものが正弦波に近いと思われ、仮に声洞が充分発達していたとしても、高調波駆動するに充分なエネルギーが得られないだろうと考えられます。 この、ソプラノよりも高音の声洞共鳴成分は声洞共鳴成分抽出実験によると70%近くにも達することがあり事実上、基本波とは異なる主要音階成分を構成します

 図-2 男性の声門閉鎖状態における長時間発声によるサウンドスペクトルと共鳴空間の分離

声門閉鎖による広帯域音階移動を伴う男性の長時間発声における声量とサウンドスペクトルの関係およそ60秒間に渡り声門閉鎖状態を保って低音から高音の移動発声を行って、声洞/声道共鳴の現れ方を観察した実験です。 D3くらいで、2700Hz付近に現れる共鳴が強まりますが、音階の上下では、横一線に見え、ほとんど変化していません。 ところが、発声開始後およそ30秒を過ぎたD#5での発声のあとの下降音階以降の最後の15秒間で、この2700Hzの共鳴からふた又に分かれるように下降する共鳴ラインの発生が認められます(赤矢印)。 これはおそらく息が切れてきたことにより、胸郭と横隔膜を最上部まで持ち上げたために喉頭が上昇し声洞の縮小が起こり、図-1での声の共鳴に当たるものが現れたと考えられます。 実際に、声洞共鳴と考えられる部分は逆に上昇していることから、完全に息が吐き出せなくなる生理学的変化の反映と解釈できるということです。  また、D#5のあとのD#4で意図せずとも自然に声量最大に達しており(110dB)、息が出尽くす前に自然に声量が増大する現象も観察されています。 前半20秒までに行ったG5までの音階上下移動では、共鳴点での声量増大は限定的であることも自然な生理学的反応であると考えられます。 なぜ、こうなるかというと、おそらく息が切れてくると、早く声門を開こうとする反射(すなわち息を吸いたくなる)が始まり、声帯を通過する息の圧力が増大するのではないでしょうか。 実際の歌唱でも、その傾向が見られます。

 自分の喉の内部を剖学的に見ることは、ファイバースコープでも使わない限り発声者には見えないのですが、 それは、朝起きぬけでは、喉の奥が下りて狭くかつ”平坦”になっているのではないかということです。 そうなると、パイプのような単純開菅の働きで声道共鳴が生じるというわけです。 ところが、発声を開始し声を出すことになれてくると、喉の奥が広がって空洞状になり、そこで共鳴が発生するようになるのではないかという風に考えると納得できそうです。 その場合でも、口頭までの声道の共鳴成分は少しはあり、それが声道延長により変化しているのでしょう。 すると、女性には、なぜ声道共鳴の強いフォルマントが出ないのかという理由もひょっとして、女性のほうが、男性に比べて、喉の奥が狭いあるいはあまり広がらないのではないかという可能性です。 確かに女性歌手の場合は、口先のとがらせ方や開き方で声の高さが変わるという指導をよく聞きます。 そして、男女問わずそれが基本だと思ってる方もいます。 しかし、男性の場合は、どうもそうはいかないようで、そういうことでは歌唱発声を理解しコントロールするのは難しいようです。 男性のほうが喉に食べ物を詰らせやすいと言われており、このような喉の奥の形と関係がありそうです。 そもそも、喉の形は食物を飲み込むためにかなりの拡張や変形が起こるようにできており、声をだしたりするためではもともとなかったわけです(第6章-進化の参照)。
    男性の場合は、声変わりによる声帯近傍の空間の広がりが大きいことはよく知られたことです。 すなわち、声変わりの影響は、オクターブ下がるということは現象であって、実はこの空洞が事実上独立した共鳴空間として発達し確立することが本質的違いかも知れません。  女性の先生では、そういった構造的に異なる成人男性の発声指導はむずかしいのかもしれません。 私の場合は、女性の先生の多い小学校などの音楽の時間はサボってたから、指導はしてもらえず、変声期の中学生では幸い男性の先生でした。 高校では女性の先生でしたけど、まともな発声指導はありませんでした。 大学院生になってから合唱をやりだして、そのとき最初の習ったのがバスの歌手で、そのあとは、所属していたテノールパートの男性のトレーナーか指揮者で、これまた男性ばかりでした。 で女性に習ったことがないんでわからないけれども。

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