Page Top                     2016/01/06 14:19:15改定2017/01/29 23:12:50

男性の歌唱における低音と高音の現れ方-早春賦とバイカル湖のほとり

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男性の歌唱における低音と高音の現れ方のサウンドスペクトルでの解析男性の歌唱における低音と高音の現れ方のサウンドスペクトルでの解析

  ロシア民謡で有名なバイカル湖のほとりとは全く逆のイメージの曲、ちょっと時期は早いけど、新春ということで、中田章作曲の日本の名歌”早春賦”の1番を題材にしましょう。 元旦にバイカル湖のあと歌ったものですが、この類の日本の名歌はほとんど女性が歌うもののようで、男声はめずらしいかも。 しかも、なぜかこの漢詩を想起する、しかも1.5オクターブもの広い音域を持つモーツアルト風の立派な大人の曲がなぜか童謡に分類され、子供の歌になっています! そういえば、琵琶湖周航の歌とか知床旅情などのあきらかに男声曲ですらなぜ女性しか歌わないのでしょうね。 その問題の基本的答えは最後にします。 理屈抜きに1から3番の歌詞まで全部聞きたい方は、この説明の最後に2つの異なる歌い方で収録してありますので、早春賦理屈抜きに聞きたい方はそこまで飛ばしてください。 バイカル湖のほとり3番までの、普通よりも3度低いA-majorでの低音試験版もあります。 では、本題にはいりましょう。 

図-1  早春賦の歌詞一番を身体共鳴を確認しながら歌った場合の振幅(声量)記録およびサウンドスペクトル
音源:MP3ー早春賦のサウンドスペクトル・振幅記録解析MP3  HiResー早春賦のサウンドスペクトル・振幅記録解析Flac 

早春賦の歌詞一番を身体共鳴を確認しながら歌った場合の振幅(声量)記録およびサウンドスペクトル図ー1に早春賦1番の歌唱全体(約50秒間)の声量(振幅)の時間変化とそのサウンドスペクトルを示します。 両矢印は息継ぎを示します。VDR1は2700Hz付近の声洞経名、VDR2はその2倍共鳴で、BR1が胸の共鳴(胸郭共鳴)です。 

上の図の最後のフレーズのクライマックスのG4(392Hz)について、Windows Media Playerの視覚エフェクト(大火炎=瞬間瞬間の周波数スペクトル:横軸、周波数;縦軸、強さ)による表示を参考につけておきます。 強いビブラートともにピーピー鳴る笛のような音にあわせて上下するE7(2700Hz付近)のところに現れた優勢な声洞共鳴ピークであることが視覚的に理解できると思います。 
 また、下段に最初のG4のあとのD4(後述:298Hz)のキャプチャーです。胸の共鳴であるBR1が喉の共鳴であるVDRを一瞬にして逆転凌駕しているのがわかります。 不随意神経制御によるミリセコンドオーダー(0.00X秒)の意識に上らない反射ですが、伴奏や部屋の残響がないと、こんなに声の特性がわかるものです。男性の歌声がいかに躍動に満ちたものか理解いただければと思います。   

  しかし、曲想からいうとこの”うたーはおもえど”の”た”に発声抑制をかけることが必要になるわけで、次のそのくだりのサウンドスペクトルとわかりやすくするためコントラストつけて歌ってますけど、実際の歌の音源をここに挙げておきますので聴いてみてください。 本人は、この部分で”ささやいた”つもりですが、これでやっとサウンドレベルは低下トレンドに乗ったくらいです。 

 図-2 早春賦第2フレーズにおける高音降下での声量抑制  
音源:MP3ー早春賦第2フレーズの高音降下時声量抑制のサウンドスペクトル・振幅記録解析MP3  HiResー早春賦第2フレーズの高音降下時声量抑制のサウンドスペクトル・振幅記録解析Flac 

 早春賦第2フレーズにおける高音降下での声量抑制

しかし、人によっては共鳴点がはずれる場合もあり、その場合は、この部分だけについては、それほど苦労せずとも歌えるわけですが、今度は別の共鳴点で問題を起こしますから、人みな平等です。

図-3 ロシア民謡ーバイカル湖のほとり1番ー C-major

音源:MP3ーロシア民謡”バイカル湖のほとり”のサウンドスペクトル・振幅記録解析MP3  HiResーロシア民謡”バイカル湖のほとり”のサウンドスペクトル・振幅記録解析Flac 

 この図-2は、ロシア民謡で有名な”バイカル湖のほとりの1番の歌詞のハ長調での歌唱の声量変化(A)とサウンドスペクトル(B)です。 胸の共鳴周波数を600Hz以下に下げるため、胸を大きく(縦に)膨らませ喉を広げた呼吸をしているのが聞こえるかと思います。 最後の下降音階の終端のC3がクライマックスになりますので、ビブラートがかなりでるくらいの95dB程度の強い息送りによる共鳴発声をして声量と響きの低下を防いでいます。

ここに音源と次に示したサウンドスペクトルは、生の声の振幅(声量)(A)とサウンドスペクトル(B)の記録(約50cm距離)です。 早春賦においては、 クライマックスが高い声であり、それを落ち着かせるために音階降下してG3で終わっています。 瀧廉太郎作曲の”花”など多くの曲にあるとり方ですが、ここでG3付近は男性の共鳴点であることが特記すべきことです(後述)。  それと対照的なのが、図-2に示した、ロシア民謡”バイカル湖のほとり”で、G3が出だしですが、それより下のC3あたりの響きが重要になってくるとともに、上のC4やE4でもバス的な発声が要求され、早春賦とはかなり趣が異なり、最後はC4からの段階降下で低い響きへと誘導して終わるのが特徴です。 これと比較すると、早春賦ではスタートがD3ですが、原譜はヘ長調でその場合は男声ではC3が出だし音だと思いますが、ここでD3にしたのは理由があります。それは私の身体共鳴の関係でもっともよく響くからです。 もともと上下の差が1.5オクターブあるため、成人男性の場合、かならず身体共鳴周波数により2つの領域に分断されます。下半分は、例えばロシア民謡の”バイカル湖のほとり”や瀧廉太郎作曲の荒城の月(原譜)や箱根八里などとおなじバス・バリトン領域ですが、上半分はテノール領域です。  中央に身体共鳴点のD4をもってくると、このG3が主音となるG-Majorになります。 そのG3では、私の身体共鳴では、3倍波が強くなり、響きが大きくなります。 曲の頂点は、G4になりますが、この周波数はG3の一オクターブ上だけの話ではなく、身体共鳴からいうと、D4とD5の胸の共鳴の間にあり、G3のオクターブ上のくせにもっとも胸に共鳴しない音階で声量は極小となります。 しかし、喉の奥の共鳴すなわち声洞の共鳴が強くなり、G4の7倍波である2751HzのF7の強い共鳴波がでます。 この共鳴波は、基本波と並ぶたかさで、私の声の和声の重要なメンバーで、声質が”横”にひろがります。    その和声構造とは、G4+G5+D6+F6+D7+F7+G6がで、そのうちG4,G5,F7が並びます。 この7倍波のF7は器楽の平均律や”自然音階”のいずれにも整合しない倍数波です。なぜなら、西洋音階のいわゆる”自然音階”でさえも、本当は、”自然”とは嘘っぱちでせいぜい5倍波までのしかも物理学的には近似的な(鉛筆を舐めた程度の?)微修正でしかないからです。 他の音階においても、F7近辺に共鳴が強い発声になっているので、原音を聴くと高い笛かホイッスルのような音が高音域でずっと響いているのが聴こえると思いますが、これは残響(エコー)ではありません。 最後は、G3ですが、実際は、3倍のD5が主要ピークとならぶ和音になっています。 この、原因は胸の共鳴で、しかもC5(ドミソ型)ではなく自然共鳴倍数波(基本波のG3で割り切れる)になるのがミソです。  ですので、身体共鳴をフルに使った歌唱になっており、これがさきの”バイカル湖のほとり”とは全然違う響きで、多分同一人物が引き続いて歌ったとは思えないかもしれません。 バイカル湖のほとりのほうは、この声洞共鳴の強烈な響きによる和声はごく一部ですから。  ただ共通点があります。それは、Aの振幅記録を見てもらうと、スタートのD3は90dBほどですが、最大声量を記録するのが、2回目のフレーズ”たにのうぐいすうたはおもえど”の・・・うたは・・・の”た”の母音”あ”であっというまに110dBを超えています。 これは共鳴点のD4で、バイカル湖のほとりで最大声量に達した音階と同じで母音も同じです。 さらにここでこのフレーズがずば抜けて声量増大があるのは、その前の音の振幅をみればわかります。 それは、”うぐいす、う・・”と高音での”う"音の連続です。 これは口の開きが少なく声量が下がり、そこで、”うた”の”う”で音階降下をはじめた途端に強い発声体勢のまま口を開くので急に大きくなるわけです。 次の音は、共鳴からはずれ普通の音階低下に伴う緊張緩和で声量低下トレンドになっているのが振幅記録上読み取れると思います。  また、男声の特徴としては、ここでも常時見られるようにしっかりした、音階上下を伴う女声にくらべると安定なビブラート(振幅変動)があることです。 振幅変動は2-3倍程度で、音階上下は振幅変動周期と連動しており、中心音階に対してほぼ対称にプラスマイナス4分の1から半音程度の範囲になります。 周期は大抵の男声では0.2秒前後のようです。 私の場合は、0.22秒前後です。 また、このビブラートは声門閉鎖が適切でかつ声帯がある程度リラックスして息送りとバランスし共振している状態で顕著に出ます。 
 
     このように男性の発声は、発声生理学上これだけ複雑なのです。 しかも体格に依存するこの共鳴特性は個人によって違いますから、すなわち和声構造と発声トレンドが違いますから、男性の歌を聴くときは基本音階(西洋の平均律や自然音階)のトレンドはあまり意味をもたいないともいえるでしょう。 ですから、個人ごとに和音の構成をかえるなどということは困難で、一般的な特に楽譜のある器楽伴奏やまして固定伴奏のカラオケのような器械がついていけるわけがありません。 これだけ見ても、この歌が”童謡”であるはずはありませんよ。  多くの最先端技術にみられるように、人間の自然の生理をコントロールできるほどは、器楽の技術は発達していないということです。 また、、このような発声生理を理解しないで、本来胃など内臓を支配する不随意神経相手に声帯をさげろじゃの、横隔膜がどうじゃの見えもせんこと随意的にコントロールできんことああこういわれても当の本人はほとんど理解・実行不能で(というか、指導者自体もわかっていない? 歌声の科学:ヨハンスンドベリ著参照)、まして、女声やピアノとおなじような感覚で指導されたらたまったものではなく、あるいは”音痴”といわれるのがいやだから、器楽や女声との整合性の高い、高音や裏声に走り、しかも、この早春賦を”子供の歌”と位置づけてはばからないことに見られるように聴く側にもどこに感性をおくが理解できていないわけです。 ですから、こういった歌の男性の本来得意とする音域の”自然”ボーカリストが”絶滅危惧種”になっている原因だと思います。 

早春賦
理屈ぬきの早春賦3番までの全歌詞の完全アカペラ歌唱は3種類収録してあります。次でどうぞ:
1. 森の歌集 第3集-#4 柔らかい歌い方
2. 森の歌集 第6集-#4 共鳴を最適化した歌い方
3. 喉と胸の共鳴の間の共鳴による男性ソプラノによる歌唱
4.バス→テノール→ソプラノに至る連続声区リレーによる歌唱

バイカル湖のほとり(A-majorによる低音試験版)

 MP3ーロシア民謡”バイカル湖のほとり”、A-majorでのサウンドスペクトル・振幅記録解析MP3  HiResーロシア民謡”バイカル湖のほとり”、A-majorでのサウンドスペクトル・振幅記録解析Flac この調ですと、3度低いだけとは思えない独特な男声特有の低音の響きが出てきます。 その他の歌曲における低音音源分析データーページ

0013  楽曲における声洞共鳴の現れ方-過去の思い出(図ー3)-ロシア音楽
0008  楽曲における声洞共鳴と胸郭共鳴の現れ方-山田耕作編曲ー荒城の月(A-Minor)(図1−2)

男性バス限界発声と超低音のサウンドスペクトルと波形解析男声の秘密についてもっと詳しく知りたい方は次でどうぞー

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男声の特質シリーズ第(男声のサウンドスペクトラム的特質について 男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について その2: 和声とビブラートについて 男声歌唱のオーディオ再生について 男声歌唱のレコーディングにおける留意点 歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察 音階移動速度と身体の共鳴空間および部屋の残響時間の関係 男声歌唱のレコーディングにおける留意点-その2:最大音量 男性の低音限界発声について 男性の最大声量とスペクトルの歌唱言語による違い 11 男性の身体共鳴周波数と共振支配による発声波形の量子化と声量の関係の解析   声帯振動と非声帯振動の比較と歌声 男性の超広帯域発声ーバスとテノール声区の連結 バスとテノール連結声区の声洞の物理サイズの計算

資料室  

超低音男声の発する可聴周波数以下の超低音は聴こえるのか?
超低音共鳴男性の超低音発声における周波数解析パターンと身体共鳴の遷移転換
極低音の共鳴男性の発する低音から可聴周波数以下の極低音の共鳴構造
男性の声区声区よさらば!ー男性歌声の自然な声量とオクターブおよび男性声区との関係
量子化現象男性の歌声の量子化現象についてー音程と倍数波ーその1
量子化現象2男性の発声の量子化現象についてー音程と倍数波ーベートーベンのトリック
歌声と話し声歌声と話し声ーその1-歌声はどこに響いて発生するのかー声洞共鳴の存在について
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音楽PTSD音階に関する議論での不足点と音楽PTSDとベートーベンの感性
荒城の月-男声低音の和声構造とピアノの比較男声低音の和声構造とピアノの比較

  1. 録音方法   歌集のレコーディング(録音)方法について  男声アカペラ歌唱再生に適した機器

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    男声のサウンドスペクトラム的特質について 男声のサウンドスペクトラム的特質について
    男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について 男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について
    その2: 和声とビブラートについて 男声の特質ーその2: 和声とビブラートについて
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    男声歌唱のレコーディングにおける留意点 男声歌唱のレコーディングにおける留意点
    歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察 歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察
    音階移動速度と身体の共鳴空間および部屋の残響時間の関係 音階移動速度と身体の共鳴空間および部屋の残響時間の関係
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    男性の最大声量とスペクトルの歌唱言語による違い 最大音量とスペクトルの歌唱言語による違い 
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  3. 自然界の音響

    1. 夏の森のセミの喧騒の中に浮かび上がる夏のウグイスの声ーForest acoustics
    2. 春のウグイスの声と森の音響空間

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