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森の湯トップ  English Top 第一章(男声の特質)  歌集トップ  レコーディング方法  森の音響空間
男声の特質シリーズ第(男声のサウンドスペクトラム的特質について 男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について その2: 和声とビブラートについて 男声歌唱のオーディオ再生について 男声歌唱のレコーディングにおける留意点 歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察 音階移動速度と身体の共鳴空間および部屋の残響時間の関係 男声歌唱のレコーディングにおける留意点-その2:最大音量 男性の低音限界発声について 男性の最大声量とスペクトルの歌唱言語による違い 11 男性の身体共鳴周波数と共振支配による発声波形の量子化と声量の関係の解析   声帯振動と非声帯振動の比較と歌声 男性の超広帯域発声ーバスとテノール声区の連結 バスとテノール連結声区の声洞の物理サイズの計算)章

Laudness curve of male voice in octave ranges 男性の声量とオクターブ範囲よび声区との関係男性の歌唱発声強度と発声声域および声区との関係-男声という単一のキャラクターについて

 図ー1にこれまでの発声実験での発声強度(声量)と発声音階のオクターブ範囲とバス(Bas)、バリトン(Bar)、テノール(Ten)、カウンターテノール(CT)の声域を示します。 ここでは、発声者の共鳴点がDシリーズと仮定して、Dのオクターブで示していますが、個人差は当然あり、このDをその個人の共鳴点に読み替えるといいです。私の場合は、たいていDかD#ときにEやFになります。 力を入れると上がる傾向にあります。力を込めた最大の叫びではA5付近で135dB程度です。 また、声帯の強度などもあって、声帯負荷が大きくなる両端の領域も個人差になってくることになります。  なお、カウンターテノールは、ソプラノのような響きをもつことから、男性ソプラノとも呼ばれますが、ソプラノと全く同じというわけではありません。 Bassより低い声で、基本波が可聴周波数下限まで(D0:18 Hz)の声区(D0-G1)はCounter Bassと呼ぶことにします。 それより、下はUltralow voiceまたはExtremely low voiceです。

図-1 男性の歌唱発声強度と声区の関係

 次の図は、同一人物の発声帯域と声量を模式的に示しています。多数の人数の平均をとると個人差に埋没する特性がはっきりと見えています。 BR1:胸の共鳴《2分の1波長共鳴); VDR1:声道(喉)の一波長共鳴; VDR2:声道2波長共鳴。 声区による分類と帯域: Bas、バス(低声)G1-E4; Bar、バリトン(中声)G#2-F#4; Ten、テノール(高声)C3-C5; CT、カウンターテノール(男性ソプラノ)C4-E6。女性はおおむねG3−E6Laudness curve of male voice in octave ranges 男性の声量とオクターブ範囲よび声区との関係発声強度は、時々で変わりますが、およその最大値の概念的集計です。 これまでに示してきたように、声量最大点は、1オクターブ離れて2箇所あります。 この2つのピークの間に声量の極小と声洞共鳴の極大(赤米印:A4)がきます。  また、D2、D3、D6にもこぶがでます。 さらに極低音での発声のデーターを追加すると(160123)、意外にも声量振幅は下がらず、D0付近の20Hz-30Hzでも85dB程度は出ています(data#36#37 男性低音集)が、聴覚の限界近くで再生の問題もあり、基本周波数自体はほとんど聴こえないでしょう。 実際は、冷媒の沸騰音(ブツブツ音)を含むエアコンの超低周波音のような、骨格も含めた全身の振動を伴うような声です。さらに低い可聴周波数以下の10Hz 前後(第-(マイナス)2オクターブ)の声を出すこともできます(ページ末尾資料室参照)。  高い方は口笛や鳥のさえずりのようなホイッスルボイスとしてD8−A8あたりの第8オクターブまで伸びており意外と声量は高いです

 こうやって概観すると、男性の発声周波数(音階)の中央は赤点線でたてに示したように、この第一共鳴点に割り付けるのが自然で、丁度男性の歌声 の発声は、この上下1-2オクターブの範囲になる傾向であることがわかるわけです。  一般的な発声指導書では、この2つの極大や”声帯の性能”にあたる自然発声範囲については書かれておらず、声区ありきです。 そして、男性声区の声量曲線は、おのおのの上限音階付近で最大となり以後急激に落ちることになっていて、声区は個人の特有の限界を示すかのようになっていますが、この図に示したように自然発声ではそうはならないです。

 追記ですが、男性は声変わりで声が下がる方ばかりが、注目されますが、実際は女性よりも下に1オクターブほど下がる一方で上に2オクターブほどあがり、男性のほうが女性よりも音響空間において占有する音域が格段に広くなり、女性と同様にホイッスルボイスも出ます。 自然界で他の動物や虫の声と男女の会話を比較すると、音響空間における生物学的な意味が見えてきます。夏の森のセミの喧騒の中に浮かび上がる夏のウグイスの声ーForest acoustics


男性のホイッスルボイス
 口笛のような声で、揺らぎのある正弦波に近いほぼ単一の周波数ピークを形成し、鳥のさえずりのようにも聴こえます。 男性の場合はあまり知られていませんが、声量の大きいかなり高い声を出すことができます(データー集:男性ホイッスルボイス集 #30鳥型


倍数波の胸郭共鳴(胸の共鳴)を利用した低音から中音域の声量増強</a>倍数波の胸郭共鳴(胸の共鳴)を利用した低音から中音域の声量増強
   次に、この胸郭共鳴を利用すると、声量が低下しがちな第三オクターブ以下の声量を増強することができます。 基本波の3倍波の共鳴では、G3付近、4倍波ではD3−F3あたりの増強を図ることができます。これは、吐き出すような声になります(詳細はデーターコレクション#22#23) 赤点線で示した追加の曲線でその様子を示してあります。 超低音においては10倍波とかそれ以上になりますが、この方法で増強することができます。 バス歌手は、姿勢や声質を観察すると、もともとそのような発声法をとっているように見えます。

   このように、男性の全体の発声域の中で眺めると、男性の声域は意外に広く普通のピアノよりも広いことがわかります。 また歌唱で常用されるバス、バリトン、テノールという声区は、重なっている音域も多く、また、これらの声域は男性特有の歌手フォルマントとよばれる声洞共鳴が強い領域(赤両矢印)であることも共通です。 そして、歌声の基本的性質は連続的で、それほど本質的な違いはないことがわかります。 このようにバリトンが、どちらにも伸びる可能性のある声区です。 しかし、これらの中でカウンターテノール(CT)は、飛びぬけて高いほうにありますから、特殊だということもわかると思います。 プロの歌手の場合は、(演奏会が立て込んでいるから)おそらくこのような広帯域発声による歌唱は困難かもしれません。 演奏会をルーチンで”期待通りに”こなす必要から、それぞれの声区で最適化するように訓練されるからです。 たとえば、テナーの場合は、D4付近では声量を抑えるように訓練されるはずです。 またバスの低音を出すとバランスを壊す可能性があるのでバスの歌を原調でうたうなどは許されないわけです。 そういう意味では、プロでないほうが、いろいろな声域で自然な声で本来の曲想の歌が楽しめるということになります。 バスやバリトンやテナーの曲はどれでも歌えるのが素人の楽しさです。 私は、若い頃、結構全国区で有名な指揮者の合唱団に入ってテナーやってましたが、家に帰るとバスやソプラノの楽譜を歌って楽しんでました。 ”声区よ、さらば”というのが、私のたどり着いたゴールです。

  

図-2 バス低音からカウンターテノールまでの連結区間での発声(14B) 音源: MP3 Flac

バス-カウンターテナー音階移動(F2-G5)と声洞共鳴

左にバスーテノール間の連結発声の例を示します。 声量曲線がおよそ想像できます。 20秒間の発声です。 長時間のサイクルを狙ったため、声門閉鎖を確認しながら発声レベルは中程度に抑えてあります。 この中でもうひとつ特徴的なのは、声洞共鳴の強い”男声領域”では、声門閉鎖に伴う音階の上下を伴った強い振幅ビブラートlが発生していることとVDR2,3とそれ以上の可聴周波数上限におよぶ共鳴倍数波が観測されていることです。  この図は、第14章補足B(14B)からの引用です。

 次に実際の楽曲での例を示します。 ベートーベンの第九(合唱)男声ソロでは、男声中央のE3を基点としてバス領域へと下降して歌われるのが、喜びの歌で、そこから上で歌われるのが、後のテノール独唱行進曲です。バス/バリトンとテナーは男声というひとつのキャラクターにおいて、このように使い分けられるということです。 この2曲とも同一人物の単一声区による歌唱で、バス方向への展開と、テノール方向の展開では違った印象に聴こえると思います。 図-1と見比べてみると、ベートーベンが第九の歌をどのような意図をもって構成をしたかがよくわかると思います。

図-2 楽曲に見られる男声中央音階からの上下方向への展開-声量曲線の実際の歌唱での現れ方

冒頭と喜びの歌(ベートーベン作曲交響曲第九番合唱)バス/バリトンソロのサウンドスペクトル解析と音階が示す身体共鳴の利用

左図が第九喜びの歌、冒頭および本文のバス/バリトン独唱の振幅(A)とサウンドスペクトル(B)で、下がテナー行進曲の振幅とサウンドスペクトルです。 この冒頭は、男声でははっきりとは聴こえるがレベルの低い内面的な響きともっとも声量の出る音階が組みあわされています。下のテノール行進曲と同じくらいの声量になります。

第九のテナー独唱行進曲のサウンドスペクトルの全体像ー声量振幅と身体共鳴、声洞(声道)共鳴および胸郭共鳴を中心とした比較左C(振幅)とD(サウンドスペクトル)は、第九テノール行進曲です。  これら2つは同一人物による歌唱ですから、直接の比較ができるわけです。 図-1も参照下さい。 
原音は喜びの歌:MP3 HiRes 
テナー行進曲:MP3 HiRes    
 
これら2曲の詳細はここに掲載しています。

その他、バスーテノール連結による歌唱の例は次のページにあります=>第14章

     
資料室  

      超低音男声の発する可聴周波数以下の超低音は聴こえるのか?
      超低音共鳴男性の超低音発声における周波数解析パターンと身体共鳴の遷移転換
      極低音の共鳴男性の発する低音から可聴周波数以下の極低音の共鳴構造
      男性の声区声区よさらば!ー男性歌声の自然な声量とオクターブおよび男性声区との関係
      量子化現象男性の歌声の量子化現象についてー音程と倍数波ーその1
      量子化現象2男性の発声の量子化現象についてー音程と倍数波ーベートーベンのトリック
      歌声と話し声歌声と話し声ーその1-歌声はどこに響いて発生するのかー声洞共鳴の存在について
      声道と声洞声道と声洞はどう違うのか?
      音程と倍数波音程と倍数波ーその2: 音階と倍数波との和合性と不和合性
      音楽PTSD音階に関する議論での不足点と音楽PTSDとベートーベンの感性
      荒城の月-男声低音の和声構造とピアノの比較男声低音の和声構造とピアノの比較
      爽秋賦とバイカル湖早春賦とバイカル湖のほとりー男性歌唱における低音と高音の現れ方とクライマックスのサウンドスペクトル


  1. 録音方法   歌集のレコーディング(録音)方法について  男声アカペラ歌唱再生に適した機器
  2. 自然界の音響
    1. 夏の森のセミの喧騒の中に浮かび上がる夏のウグイスの声ーForest acoustics
    2. 春のウグイスの声と森の音響空間
  3. 男声の特質
    1. 第1章 男声のサウンドスペクトラム的特質について
    2.  第2章 男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について
    3. 第3章 男声の特質ーその2: 和声とビブラートについて
    4. 第4章 男声歌唱のオーディオ再生について
    5.  第5章 男声歌唱のレコーディングにおける留意点
    6. 第6章 歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察
    7. 第7章 音階移動速度と身体の共鳴空間および部屋の残響時間の関係
    8. 第8章 男声歌唱のレコーディングにおける留意点-その2:最大音量
    9.  第9章 男声の特質ー低音限界発声について
    10.  第10章ー最大音量とスペクトルの歌唱言語による違い
    11.  特別章ー男声の発する可聴周波数以下の超低音は聴こえるのか?
    12. 第12章 身体共鳴周波数と共振支配による発声波形の量子化と声量の関係の解析
    13. 第13章 声帯振動と非声帯振動の比較と歌声
    14. 第14章 男性の超広帯域発声ーバスとテノール声区の連結 14Bバスとテノール連結声区の声洞の物理サイズの計算
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