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森の湯トップ  English Top 第一章(男声の特質)  歌集トップ  レコーディング方法  森の音響空間
男声の特質シリーズ第(男声のサウンドスペクトラム的特質について 男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について その2: 和声とビブラートについて 男声歌唱のオーディオ再生について 男声歌唱のレコーディングにおける留意点 歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察 音階移動速度と身体の共鳴空間および部屋の残響時間の関係 男声歌唱のレコーディングにおける留意点-その2:最大音量 男性の低音限界発声について 男性の最大声量とスペクトルの歌唱言語による違い 11 男性の身体共鳴周波数と共振支配による発声波形の量子化と声量の関係の解析   声帯振動と非声帯振動の比較と歌声 男性の超広帯域発声ーバスとテノール声区の連結 バスとテノール連結声区の声洞の物理サイズの計算)章

男声の歌唱における低音の和声構造ーピアノとの比較

楽曲における声洞共鳴と胸郭共鳴の現れ方-荒城の月原譜(ロ短調、B-Minor)原譜(ロ短調)による荒城の月はこちら

図ー1 山田耕作編曲による荒城の月の歌唱における振幅とサウンドスペクトル-音源:MP3MP3  HiRes Flac

男性による荒城の月の歌唱における振幅とサウンドスペクトル

図ー1は、滝廉太郎作曲の荒城の月を歌った場合のサウンドスペクトルを示しています。 何気ない曲ですが、低音の響きが重要な曲で、しかも滝廉太郎の原譜は伴奏のないアカペラ譜で、大分県近郊(日田-日出-宇佐)で盛んな日本伝統の声楽、すなわち詩吟の影響を受けた曲と考えられます。 
  ところで、この曲には何箇所か重要な低音がありますが、ここでは、最後のD3に着目して解析してみます。 全体では100dB前後ですが、このD3は95dBの強さを持つはっきりした終端の音階です。 この波形を図ー2に示しました。 周波数解析の結果(図-4)から、基本波145Hz D3で、1倍波から4倍波まで確認され(矢印)、BR1が丁度4倍波の共鳴に当たります。4倍波は587HzでBR1に当たります。 VDRの共鳴は18倍波か19倍波のどちらかです(平均18.5倍)。 ビブラートは142-150Hzで平均(実測)が145Hz(D3)で2667Hzです。 その前の音程が218Hz A3です。 声洞あるいは声道の共鳴要素の物理学的モデルについては14Bに詳しく書いています。

 

図-2 荒城の月終端の男声D3の発声波形とピアノ波形との比較

 A: D3、145Hz B :ピアノD3、147Hz C: ピアノ D3+D5
荒城の月終端の男声D3の発声波形とピアノ波形との比較

この図-2Aに示したように男性のD3の発声(母音:お)は、この測定での基本波は145Hzですが、それよりレベルの高い2倍、3倍、4倍波が認められ、4倍波が最大の強度を持っています。 これは、D5付近(600Hz付近)の胸郭共鳴が支配的であることを示しています。 それから離れた位置に声洞共鳴である2694HzのE7が立ち上がっています。 声洞を広げた状態での下降音階跳躍(A3->D3)のために声洞共鳴が増強された結果です。 また、D3で響かせるために胸郭を広げているので、胸郭共鳴周波数も40Hzほど、前のA3に比べて下がっています。 波形を見ると、胸郭共鳴に支配された結果、ほぼ等しい4つの短周期の波形に量子化されて(分割)されています。 これは丁度4倍波が群を抜いたサイズであることの反映です。 一方、ピアノで同じ基本波のD3のキーを叩いてみると、Bのような波形で、ノイズの乗ったような形で、決してきれいな波形とはいえません。  そこで、このピアノのD3にD5のキーを重ねて叩いてみた結果が図-1Cです。 なんと、図-1Aに示した男性の声に似たではありませんか。 要するに男性の歌声は、単音の音階では説明できない物理学的に共鳴量子化したきれいな波形で、ピアノの和音に匹敵する響きをもっていることがわかります。また、和声は、3倍波が強いことから、D3+D4+A4+D6+E7の5元和声となります。 オクターブ関係を除くと、D-A-Eの3元になります。 女声はもともと、ピアノの第4‐第5オクターブの波形によく似ており、また、3倍波や4倍波以上が少ないことが多いので単音階で解釈できることはすでに述べましたが、この実験から男性の歌声の特徴がよく理解できると思います。 滝廉太郎が作曲したアカペラの原譜による歌唱を分析すると、さらによく理解できると思います。原譜(ロ短調)による荒城の月のスペクトル分析

 

図-3 男声D3の波形とピアノD5の波形の比較

この図は、図-2Aの男声D3の波形とその4倍波にあたるD5のピアノの波形と比較しました。 男声のピッチの細かい波形すなわち量子化された波形の短周期と非常に似た波形をしています。 これは、図-1Aの男声波形はピアノでいえば、中央下のD3のキーと中央上のD5のキーを同時に奏でた時の男声低音D3の波形とピアノD5の波形の比較音に近いということであり、明らかに和声です。 逆に言えば、男性の歌声の量子化を異なる音域のピアノの少なくともキー2つで表現しているということになるわけです。 一方で男性のほうは、声を出すだけで和声になっているわけですから、自然の営みはやっぱりすばらしいわけで たかがオクターブの違いしかないなどと決して考えてはいけないわけです。  

図-4  周波数解析結果の比較

荒城の月終端の男声D3の発声波形とピアノ波形(D3,D5)とピアノ和声(D3+D5)との周波数スペクトル比較

A. 図-2Aの男声D3; B,図-2BのピアノのD3; C., 図-3BのピアノのD5; D.、図-2CのピアノのD3とD5を同時に弾いた場合、の周波数解析結果を示しています。
 ここで使用したのは典型的なアップライトピアノでYAMAHAの中級モデルです。  ピアノの低音弦はあまり響きのよくない音で、一方、中央上のD5ではきれいな正弦波に近い、いわば澄んだ音であることがわかります。 そこで、この2オクターブ違いのD3とD5を同時に弾いてみると、D5の音が丁度バランスよく増強されて深い響きになっているのが、スペクトルから推定できます。 波形を見ると、男声のD3のパターンに近づきますが、スペクトル的には、3倍波が抑圧され、女声が裏声に近くなっています。男声の場合に4つの量子化がきれいにできているのは、胸郭での突出した共鳴により、むしろ図-4C.のピアノのD5に近づいたと見たほうがいいようです。波形からは、そう見えます。 ピアノでは、ここに示したいずれの場合でもD5が基本波に並ぶ程度で大きく超えることはないというのがわかります。 また、声洞共鳴はE7であり、ここでも突出して出現しており、ピアノの伴奏に埋没することはないだろうということがわかります。 また、もともと無伴奏で作曲された荒城の月の最後の声が、D-A-Eの和音になるのは合理的と思われます。

音源分析データーページ(図-1-2図-3)  声の波形とサウンドスペクトル音響データ集

男性の発声音域と声区および声量の関係

資料室  

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      爽秋賦とバイカル湖早春賦とバイカル湖のほとりー男性歌唱における低音と高音の現れ方とクライマックスのサウンドスペクトル
  1. 録音方法   歌集のレコーディング(録音)方法について  男声アカペラ歌唱再生に適した機器

  2. 男声の特質シリーズ
    男声のサウンドスペクトラム的特質について 男声のサウンドスペクトラム的特質について
    男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について 男声の特質ーその1; ビブラートの性質と倍数波による重層的和音と現代音階の不協和音について
    その2: 和声とビブラートについて 男声の特質ーその2: 和声とビブラートについて
    男声歌唱のオーディオ再生について 男声歌唱のオーディオ再生について
    男声歌唱のレコーディングにおける留意点 男声歌唱のレコーディングにおける留意点
    歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察 歌唱発声における物理的・身体的要因-進化論的考察
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  3. 自然界の音響
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